原民喜展
わかくさの地元、岡山県笠岡市。
実は備前焼のふるさと備前市から遠く、隣町は広島県の福山市。
(備前市は岡山県と兵庫県の県境)
その隣町、福山市のふくやま文学館で開催されている『原民喜展』に行ってきました。
今まで作品を読んだことは無かったのですが、先日偶然にも古本屋さんで『夏の花』を発見。
この出逢いに引き寄せられるように・・。
自筆の原稿が多く展示され、中には親戚に宛てられた遺書も。
たんたんと綴られているその内容、筆跡は、とてもおだやかで冷静。
私はそこに死へのつながりを見つけることができませんでした。
佐々木基一氏宛の遺書にもあるように、妻の死後、書き綴った作品が、すでに遺書として完結していたということなのでしょうか・・。
…
ただ一人、その貧しい作品をまるで狂気の如く熱愛してくれた妻がゐた。その後私は妻と死別れると、やがて広島の惨劇に遭つた。うちつづく悲惨のなかで私と私の文学を支へてゐてくれたのは、あの妻の記憶であつたかもしれない。そのことも私は「忘れがたみ」として一冊は書き残したい。
そして私の文学が今後どのやうに変貌してゆくにしろ、私の自我像に題する言葉は、
そして私の文学が今後どのやうに変貌してゆくにしろ、私の自我像に題する言葉は、
死と愛と孤独
恐らくこの三つの言葉になるだらう。……十数年も着古した薄いオーバーのポケツトに両手を突込んで、九段の濠に添ふ夕暮の路を私はひとりとぼとぼ歩いてゐる。
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